初任給24万円が、4年で30万円になりました
2021年、大手ゼネコンの大卒初任給は24万円でした。
2025年4月、大林組・鹿島・清水建設・大成建設・竹中工務店の5社が、大卒初任給を30万円に引き上げています。 4年間で25%アップです。
準大手の西松建設、長谷工コーポレーション、中堅の東洋建設も追随しました。 「初任給30万円」は、もはやスタンダードです。
では、この波は中小建設会社にどんな影響を与えているのか。
弊社が採用支援をしている現場でも、「大手と同じ水準は出せない。でも出さないと人が来ない」という声を本当によく聞きます。
賃上げは、もはや福利厚生ではありません。採用戦略そのものです。
この記事では、建設業の賃上げの最新動向を整理し、中小企業が限られた予算で採用競争力を高める方法まで解説します。
建設業の賃金データ。「高い」は本当か
平均年収565万円の裏側
2024年の建設業の平均年収は565万3,000円。 全産業平均の485万円を上回っています。
ただし、この数字をそのまま受け取ると判断を誤ります。
年間230時間多く働いて、ようやく80万円高い。 時間あたり賃金で見ると、建設業は決して高くありません。
求職者はこの事実を知っています。 「年収は悪くないけど、拘束時間が長すぎる」。弊社の支援先でも、面接辞退の理由として最も多いのがこの類のコメントです。
設計労務単価は13年連続で過去最高を更新
国土交通省が定める公共工事設計労務単価は、2025年度に全国全職種平均で日額24,852円に達しました。
公共工事設計労務単価の推移
国土交通省発表データより作成
前年度比6.0%、2021年度比では22.9%の上昇です。
国交大臣と建設4団体は、技能者賃金を「おおむね6%上昇」させる官民共同目標を掲げています。 制度としても、賃上げの流れは止まりません。
大手ゼネコンの賃上げ競争と中小企業への影響
春闘と初任給の動向
2025年春闘では、建設業の賃上げ率は平均5.46%でした。
大手ゼネコンの賃上げ事例(2025年度)
| 企業名 | 賃上げ率 | 大卒初任給 |
|---|---|---|
| 大成建設 | ベア+定昇で平均6% | 30万円 |
| 清水建設 | ベア3.1%、計5.7% | 30万円 |
| 西松建設 | ベア+定昇で10%超 | 30万円 |
| 長谷工 | — | 30万円超(業界最高水準) |
各社IR情報・報道より作成
西松建設の10%超は目を引きますが、問題はここからです。
中小企業への打撃
大手が初任給30万円に揃えたことで、中小企業の求人がさらに見劣りする構造になりました。
クラフトバンク総研の調査(2025年版・社員5〜100名の建設会社1,659社)の結果です。
「賃金が上がった」と回答した割合(年商規模別)
[クラフトバンク総研「中小建設業の人手不足・賃上げに関する調査:2025年版」](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000080019.html)
年商1億円未満の企業では、賃上げ実施率がわずか18%。 大手との年収格差は約250万円です。 この差がある限り、同じ土俵では戦えません。
さらに深刻な数字があります。
- 人手不足で仕事を断った経験がある:68%
- 採用活動をしていない:2割超
- 人材育成・離職防止を「何もしていない」:4割
賃上げできない → 人が来ない → 仕事を断る → 業績悪化 → さらに賃上げできない。 この負のスパイラルに入ると、自力での脱出は困難です。
改正建設業法が「賃金の底上げ」を制度化する
標準労務費と「著しく低い見積もり」の禁止
2025年12月に全面施行された改正建設業法は、中小企業にとって追い風です。
この法改正で、下請負人が「適正な利益を確保した見積もり」を堂々と提出できるようになりました。 つまり、賃上げ原資を価格転嫁で確保する道が法的に開かれたのです。
ただし、制度を知っていても実際に見積もり体制を整備し、元請と交渉するのは簡単ではありません。 弊社の支援先でも、「何をどう変えればいいか分からない」という声が多いのが現実です。
中小建設会社がとるべき3つの賃金戦略
戦略1:総報酬パッケージで差別化する
基本給の大幅な引き上げが難しい場合は、「総報酬」で勝負する発想に切り替えましょう。
- 資格手当の充実(施工管理技士1級で月3〜5万円など)
- 住宅手当・家族手当の新設
- 工事完了ボーナスの設定
- 資格取得支援(受験料・講座費用の全額負担)
基本給が大手に劣っていても、手当と福利厚生を含めた「手取り」で遜色ない水準を実現できれば、十分に戦えます。
ただし、これを求職者に正しく伝えるには、求人票の書き方を変える必要があります。 「月給25万円〜」では伝わりません。
戦略2:年収モデルを具体的に提示する
求人票でもっとも応募を左右するのは、給与情報の「解像度」です。
「月給25万円〜(経験による)」。これでは求職者は判断できません。
「入社3年目・2級施工管理技士取得で年収420万円(月給28万円+資格手当+賞与)」。このレベルの具体性が必要です。
弊社の支援実績では、年収モデルを3パターン記載した求人票に変えただけで、応募数が2.4倍になったケースがあります。
戦略3:賃上げ原資を価格転嫁で確保する
改正建設業法の標準労務費制度を活用し、元請や発注者に対して適正な労務費を含む見積もりを提出することが、賃上げの第一歩です。
「安く受注して人件費を削る」という構造から脱却しなければ、いつまでも採用競争に勝てません。
ただ、ここで現実の壁があります。
「戦略は分かった。でも、求人の改善も賃金設計も面接対応も、全部を自社の人事だけで回すのは無理」。弊社に相談される経営者の多くが、最初にこうおっしゃいます。
中小建設会社の人事担当は、採用だけが仕事ではありません。 総務・経理と兼任していることがほとんどです。
そんな会社にとって、月額固定で採用業務を丸ごと任せられる採用代行は、合理的な選択肢です。 求人媒体の運用、人材紹介のエージェントコントロール、スカウト送信。複数の採用チャネルを組み合わせて最適化するには専門知識と工数が必要です。 採用代行なら月額10万円〜で、これらをまとめてプロに任せることができます。
→ 採用代行(RPO)とは?建設会社が導入すべき3つの判断基準
まとめ
建設業の賃上げは制度的にも市場的にも「止まらない流れ」です。
設計労務単価は13年連続で過去最高を更新。 大手ゼネコンの初任給は30万円に。 改正建設業法は標準労務費を制度化しました。
一方、年商1億円未満の中小企業では賃上げ実施率がわずか18%。 大手との格差は広がるばかりです。
中小企業がとるべき判断は、2つに1つです。
- 自社で賃金設計・求人改善・採用活動をすべて回す(人事リソースと専門知識が必要)
- 採用のプロに任せて、本業に集中する(月額固定で予算が読める)
どちらの道を選ぶにしても、「何もしない」が最もコストの高い選択です。